【視察報告】都市戦略の現場から学ぶ神戸市のまちづくり ― 郊外と都心の再構築に挑む神戸モデル(2025年6月25日)
我々、日本維新の会横浜市会議員団・無所属の会は、2025年6月25日に神戸市の都市戦略を視察しましたので、以下ご報告いたします。

はじめに
1995年の阪神・淡路大震災からの復興を経て、神戸市は「住みやすさ」と「持続可能な都市成長」の両立に向けた都市戦略を展開してきました。今回の視察では、タワーマンション規制、駅前リノベーション、森林再生といった多角的な取り組みを通じて、都市機能の集積と郊外ニュータウンの再生をどう両立させているかを学びました。

タワーマンション規制の概要
- 神戸市では、三宮周辺の「新機能誘導地区」において2018年よりタワーマンションの建設を抑制する規制を導入。
- 容積率900%の商業地域でも、住居系用途を制限し、周辺も容積率400%以下に抑制。
- 背景には、過度な人口集中による小学校不足や地域インフラのひっ迫がある。
- この規制は、地域ルールとして定着しつつあり、用途の明確化や住環境保全に寄与。
視察内容
1.都市開発の流れ
- 戦後は海側の南部に市街地が集中
- 1970年代〜1990年代にかけて、山の土砂で海を埋め立て、ポートアイランドや六甲アイランドを造成
- 同時に山側ではニュータウンが開発され、鉄道駅を中心に郊外型の居住地整備が進行
- 2010年ごろには都心と郊外の構図が定着
2.都市構造・都市計画の考え方
- 神戸市都市計画マスタープランに基づき、鉄道ネットワークを軸とした都市構造を整備
- 都心核(三宮周辺)/連携拠点(岡場・西神中央など)/地域拠点(須磨区・垂水区・北区)

3.三宮の都心機能とタワーマンション規制
- 三宮は商業・業務・行政・文化・観光の拠点
- 容積率900%の商業地域として都市機能を集積
- 2018年から「新機能誘導地区」として住居系用途を制限、周囲も容積率400%以下に規制
- 高層マンションの急増による小学校インフラ不足が課題に
4.郊外ニュータウンの再生
- 北区・西区・須磨区・垂水区などで人口減と高齢化が進行
- 一戸建ての再建を促すため、容積率や用途地域の見直しを進行中
- 空き家や低未利用地の課題に対応する規制緩和を模索
5.公共交通重視の都市政策
- 2015年以降、公共交通優先の理念を明確に
- 用途地域の水色エリアなどでは自家用車を持たない生活スタイルが一般化
- 歩行・鉄道・バスによる移動を前提としたまちづくりを推進
6.駅前リノベーションの取り組み
- 駅前広場の再整備、照明・舗装などを段階的に整備
- 効果の可視化には中長期的なモニタリングが必要
- リノベーション済の駅は少数、今後の展開が注目される
7.こうべ木陰プロジェクトと森林都市の未来
- 副市長をトップとした横断的な推進本部を設置
- 企業の協賛によるネームプレート付き植樹の実施
- 公園や街路樹の配置転換・臨海部の緑化も検討
質疑応答(抜粋)
Q1. なぜ地域ルールではなく都市計画で規制をかけたのか?
A. 特別用途地区や独自条例は強い制約になるため、市民との合意形成や制度運用の柔軟性を考慮し、都市計画での誘導が妥当と判断した。
Q2. タワーマンション規制による実際の効果は?
A. 小学校のインフラ圧迫や住環境への影響が抑制され、用途バランスの取れた都市空間形成に寄与している。
Q3. 中心市街地と郊外の再構築を同時に進める難しさは?
A. 都心の誘導と郊外の再生は方向性が異なり、制度設計も分かれるため、別軸で施策展開している。
考察・気づき
神戸市の都市戦略は、「都市再構築」と「暮らしの質の向上」を両立させる挑戦の連続です。
- 都心部では無秩序な高層化を抑制しつつ、都市機能の集約による利便性向上を実現
- 郊外ニュータウンは、既存住宅の規制緩和やリノベーションによって、人口再流入の基盤を整備中
- 「こうべ木陰プロジェクト」など、環境施策を都市計画に統合する先進的なアプローチは、横浜市にも応用可能な示唆に富んでいました
都市の未来は、制度と暮らしの接点にあります。神戸市での視察して見聞きした内容を活かし、横浜市でも持続可能な都市づくりを目指していきます。

左から、柏原すぐる、坂井ふとし、くしだ久子、いそべ尚哉、大山しょうじ